「保冷バッグと台車で広がる新しい働き方?街頭お菓子販売の真実」

街角の保冷バッグ販売を追う:新しい働き方か、それとも闇のビジネスか

街を歩いていると、キャリーカートに大きな保冷バッグを載せて、お菓子を売っている人を見かけたことはありませんか?クッキー、チョコ、カステラ、バターケーキなどをまとめて「1袋1000円!」と声をかけてくるあの光景。最初は「ちょっとした移動販売かな?」くらいに思ってしまいますよね。けれど、この販売スタイルには、表からは見えない二つの顔があります。今回は、その“光”と“影”を探ってみましょう。


目次

✨前半:一見すると華やかに見えるポジティブな顔

🌟1. ノマド感覚?自由な働き方スタイル

保冷バッグ販売の最大の特徴は「自由度」です。店舗を持たず、商品とバッグさえあればどこでも仕事ができる。シフトに縛られず、自分のペースで街を歩きながら販売する姿は、まさに“ノマド的”な働き方にも見えます。固定のオフィスを持たずにPCひとつで仕事をする人が増えたのと同じように、物販でも「場所に縛られない自由さ」を体現しているわけです。例えば、ある20代の男性販売員は「昨日は渋谷、今日は上野。気分によって場所を変えられるのがいい」と語っています。確かに、会社に出勤せず、自分の判断で動けるのは魅力的に映ります。

💡2. 固定費ゼロの画期的営業モデル

通常、商売には「家賃」「光熱費」「内装」などの固定費がかかります。しかし、この販売はほぼゼロ。バッグと台車、商品があればすぐに始められ、必要なのは自分の体力と笑顔くらい。初期投資も少なく、スモールスタートが可能な点では、画期的な営業手法といえるでしょう。ある販売員は「最初はアルバイト感覚で始めたけど、思ったより身軽で、出費がほとんどないのがいい」と話していました。販売場所を移動できるため、人通りの多いエリアやイベント帰りの人波を狙うなど、柔軟な戦略も取れます。

🌱3. フードロス削減への貢献

さらに見逃せないのが「食品ロス削減」への貢献です。賞味期限が近い商品や規格外品を活用することで、本来なら廃棄されてしまうお菓子が消費者の手に渡ります。近年問題になっているフードロスの削減という点では、社会的にも意味のある取り組みに見えます。ある主婦の方は「安く買えるだけじゃなくて、廃棄が減るなら良いことをした気持ちになる」と話しており、消費者の満足感にもつながっているようです。


⚠️後半:笑顔の裏に潜む“甘くない現実”

ところが、この保冷バッグ販売には裏側があります。表向きは「自由でスマートな働き方」や「フードロス削減」という顔をしていても、実際の構造をのぞくとかなり複雑で、決して手放しで褒められる仕組みではありません。

🛒1. 商品はどこから来るのか?

保冷バッグに詰められたお菓子の多くは、以下のようなルートから流れてきます。

  • 規格外品・余剰品:形が崩れていたり包装不良で流通に乗せられないもの。
  • 卸問屋の在庫処分:売れ残りや賞味期限間近の商品。
  • 倒産品や輸入菓子の処分:小売業者や輸入会社が潰れた時に残った在庫。

例えば、ある販売員は「メーカー名は聞いていない。とにかく“訳あり品”として渡されるだけ」と証言しています。つまり、大手メーカーが直接この販売スタイルを運営しているわけではなく、多くは“二次流通”や“訳あり品”です。中には「どこから来たのかよく分からない」怪しい商品が混ざることもあります。

💰2. 元締めが笑うビジネスモデル

元締め(業者)は大量の商品を倉庫で抱え、販売員に渡します。その仕組みはこうです:

  • 商品の仕入れ値は定価の1〜2割程度。500円のクッキーなら50〜100円で仕入れる。
  • 販売員に「1袋1000円で売れ」と指示。
  • 実際の原価は200円程度でも、定価のように売らせる。
  • 販売員が売った1000円のうち、取り分は300〜400円程度。残りは元締めの懐へ。

販売員は汗水流して歩き回っても、実際に手元に残るのは少額。元締めは販売員を多数抱え、リスクも労力も背負わずに利益を得る構図になっています。ある元販売員は「結局、自分たちは駒でしかなかった」と振り返っています。

🥵3. ノルマと自己負担の現実

販売員はアルバイトではなく「業務委託」という扱いにされることが多く、社会保険や労働保険はなし。売れ残れば自腹で買い取らされるケースもあり、ノルマを課されることさえあります。ある女性販売員は「3袋だけ売れ残ったら、それを給料から差し引かれた。実質赤字の日もあった」と語っています。自由に働けるどころか、実際には歩合制とノルマに苦しむ例も珍しくありません。

🚫4. 法律的グレーゾーン

本来、路上での販売には道路使用許可や保健所への届け出が必要です。しかし実際には、無許可で販売しているケースが大半。食品衛生法上の「移動販売業」のルールを守っていない可能性もあり、消費者にとっては安全性の保証がないのが現実です。ある市民からは「販売員が歩きながら商品を触っていた。衛生的に大丈夫なのか心配」という声も上がっています。

🤔5. 消費者に潜むリスク

「賞味期限が近いから安い」という説明は一理ありますが、中には表示がはがされていたり消されている商品も見られます。そうなると本当に安全なのか判断できません。さらに、スーパーの値引き品よりも割高に感じるケースすらあり、“お得”という言葉に惑わされやすいのです。ある購入者は「安いと思って買ったら、スーパーの半額セールの方がずっと安かった」と苦笑いしていました。


📝まとめ:光と影をどう見るか

保冷バッグ販売は、一見すると「新しい働き方スタイル」や「フードロス削減への貢献」といった光の側面を持っています。しかしその裏には、元締めによる利益独占、販売員への負担、法律的なグレーゾーン、そして消費者が抱えるリスクという影の部分が色濃く存在します。

街角で見かけるあの光景は、私たちの社会が抱える“食品ロス”や“働き方の多様化”という課題を象徴するものでもあります。けれど同時に、“労働搾取”や“規制の穴”といった問題も浮き彫りにしているのです。次に見かけたとき、あなたはその保冷バッグからお菓子を買いますか? それとも、スルーしますか?

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