「小澤征爾と小沢健二、二人の“オザワ”が紡ぐ奇跡の音楽DNA」

目次

小澤征爾――家族が紡いだ運命と音楽の血脈

幼少期と家庭の支え:満州からリアカーの道へ

1935年、満州・奉天(現・中国・瀋陽)に生まれた小澤征爾さん。歯科医の父・開作さんと母・さくらさんのもとで、幼い頃から音楽に囲まれ育ちました。

征爾さんにとって最初の音楽体験は、5歳のクリスマスに母から贈られたアコーディオン。そして本格的な音楽活動へと道を開いたのが、ピアノを習うきっかけでした。しかし、ピアノのない家庭。そこで父と兄たちが決意し、なんと横浜までピアノを買いに出かけ、従兄・克己さんや俊夫さんとともに、リアカーで60、あるいは150キロともいわれるその楽器を3日かけて立川まで運んできたといいます

しかも、その道中、坂道の崖で危うく転落しそうになったところ、父・開作さんが踏ん張ってくれたというエピソードは、まさに家族の愛と「自由教育」への信念の象徴です。俊夫さんは後にこう回想しています。

「とても貧しくなっていくのに、征爾に音楽を習わせていると親類から非難されても、『おれの自由教育が正しかったかどうかを証明するのは、おまえたちだ』と父が腕をとめて語った」note(ノート)

その言葉は、音楽家としての人生を歩む征爾さんの原点となりました。

名前に込められた戦争と民族の歴史

父・開作さんは満州で活動する村の人々や多民族の共存(五族協和)を信じる人物で、その信念は息子の名前にも込められています。「征爾」の「征」は板垣征四郎、「爾」は石原莞爾という関東軍の将校たちの名から取ったものでしたウィキペディアウィキペディア。戦争と民族の歴史を背負うような名前は、家族の思いと時代背景を象徴しているようです。


国際的指揮者への道:志と挑戦の連続

1959年、フランス・ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝。その後、アメリカ・タングルウッドではクーセヴィツキー賞を受賞し、カラヤンやバーンスタインに指導を仰ぎ、指揮者としての土台を築きますウィキペディアnote(ノート)

1961年にはニューヨーク・フィルの副指揮者も歴任し、1973年には長く在籍することになるボストン交響楽団の音楽監督に就任。以来、ウィーン国立歌劇場の音楽監督としても活躍し、2002年にはウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを指揮する日本人として初の偉業を成し遂げましたウィキペディアウィキペディア


家族を愛し、子どもたちを慈しんだ“親馬鹿”な姿

世界的な指揮者としての顔の裏には、子どもたちへの深い愛情とユーモアにあふれた“親馬鹿”な一面がありました。

長女がサンフランシスコで生まれる際、ピーク時の演奏シーズンと重なったにもかかわらず、代役を立ててまで病院に駆けつけ、分娩室に入るために特別に白衣で全身消毒して立ち会ったエピソードはあまりにも有名です。その翌々年には同じ病院で長男の誕生にも立ち会い、病院スタッフはもう白衣を用意していたほどだったとか

さらに、自宅近くの小学校に週一回訪れ、担任の許可を得て子どもたちに音楽の話をする“おしかけスピーチ”をシリーズ化し、思わず涙をこぼすほど感動したという逸話にも人柄が垣間見えます


親族の多才な顔ぶれと文化的血脈

小澤家の親族には、芸術や文学など多彩な才能が光ります。

再婚された入江ヴェラ(美樹)さんは白系ロシア貴族の血を半分受け継ぐ美しいモデルで、娘の小澤征良さんはエッセイスト、息子の小澤征悦さんは俳優。またNHKアナウンサー・桑子真帆さんは征悦さんの妻ですウィキペディアNEWSポストセブン

加えて、小澤征爾さんの兄・俊夫さんは昔ばなし研究の第一人者、筑波大学名誉教授として文学や文化継承にも尽力されていましたウィキペディア+1


甥・小沢健二――音楽と芸術の血脈は続く

驚くべきことに、その血脈はさらに広がり、人気ミュージシャン・小沢健二さんもその一員です。健二さんは征爾さんの次兄の息子、つまり甥にあたりますウィキペディア+1

健二さんは叔父の葬儀の際に心から追悼のコメントを述べました。

「征爾叔父さん、本当にたくさん、たくさんのことをありがとうございました」

これにより、多くの人々がこの家族のつながりを改めて認識することになりました。

また、小沢家は母方を通じて芦田均元総理大臣らとつながる由緒ある一族でもあり、政治・文化的血脈の広がりにも驚かされますウィキペディア


実家での対立と後継を巡る葛藤

国際的指揮者の功績とは裏腹に、晩年には家族間で対立が生じたこともありました。30億円ともいわれる遺産相続を巡り、長男の征悦さんや長女たちとの間で不協和音があったとの報道もありますNEWSポストセブン


終章:愛、音楽、文化を受け継ぐ血脈

  • 父・開作から受け継いだ「自由教育」と信念:名前に込められた意志と、リアカーで運んだピアノの物語は、征爾さんの原点。
  • 指揮者としての世界的歩み:戦後の日本からヨーロッパへ、そしてアメリカの音楽界へと羽ばたいた軌跡。
  • 家庭と子どもへの愛:親として舞台も家庭も慈しんだ日々のエピソード。
  • 多彩な親族:文学・芸術・演劇界へと広がる文化的ネットワーク。
  • 甥・小沢健二との文化的接点:音楽、文学、文化の交差点に位置する存在。
  • 葛藤と継承の現実:華やかな成功の裏にある家族の苦悩と対話の必要。

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