「たくみおねえさんの想定外の卒業、そしてだいすけおにいさんの奇跡の1年続投――。」
前回記事で、Eテレの歴史に刻まれた「前例なき卒業のズレ」がもたらした、2年連続の卒業特需という奇跡についてお話ししました。
しかし、物事には必ず裏があるもの。あの想定外のピンチを、瞬時に「過去最大の収益チャンス」へと変えてしまった、恐るべき深謀遠慮を持つ『真の黒幕』が背後にいたことをご存知でしょうか?
今回は、営利を目的としないはずの「みなさまのNHK」の真横で、年間150億規模をゴリッゴリに稼ぎ出す謎の永久機関『NHKエデュケーショナル』の生態を徹底解剖。氷河期世代のビジネス視点で、私たちが喜んで財布を爆破させられてしまう「絶対に負けないビジネスモデル」の深淵に迫ります。
チラつく黒幕の影に怯えながらも、いざ、大人の世界の扉を開けてみましょう……!
卒業のズレは「偶然」だけどそのビジネスモデルは「必然」だった

皆さんこんにちは。ちらつく黒幕に怯えながらも何とか生き長らえた、けだま。です。(前回記事参照)
前回までのお話――。
限界まで走り抜けた、たくみおねえさん。急転直下の降板の告白に、『おかあさんといっしょ』は番組存亡の危機を迎えます。ここで番組側が打った起死回生の一手が、だいすけおにいさんの続投という、お堅いNHKの嫌う「前例のない方策」でした。
たくみおねえさんの卒業は、NHK側からしたら想定外の『偶然』でした。
しかし、「ピンチはチャンス」の格言通り、白騎士のようなだいすけおにいさんに1年続投してもらい、結果として『2年連続卒業特需』の甘い果実の恩恵を受けるビジネスモデルが、もしも最初から「必然」だったとしたら……。
その老獪な深謀遠慮を持ち、Eテレの知的財産・グッズ・ビジネス展開を一手に牛耳る黒幕こそが、
『NHKエデュケーショナル』です。
ここで、謎の秘密結社(※つい筆が走りました💦れっきとした株式会社です。)の概要を見ていきましょう。
年間売上150億!NHKエデュケーショナルって何者?徹底解剖してみる
公的な情報やコーポレートデータを調べると、その概要は以下の通りです。
- 正式社名: 株式会社NHKエデュケーショナル(NHK Educational Corporation)
- 株主構成: 日本放送協会(NHK)が100%出資する完全子会社。
- 設立の目的: 1989年、NHKの組織肥大化を防ぎ、番組制作の効率化と、Eテレ(当時の教育テレビ)のコンテンツの質の向上・外部展開(ビジネス化)を目的として設立。
- 売上規模: 毎年の決算公告等によると、受託制作やライセンス収入を含め、安定して年間100億円〜150億円規模の事業収益を上げる、NHKグループ内でも有数の優良・中核企業。



調べてびっくり!ゴリッゴリに利益あげてるじゃん!
けれども、ここで不思議に思うのが、営利を目的としない『みなさまのNHK』が、外郭団体を使ってガンガン儲けている現実です。
実は、この「NHK本体」ではなく「独立した株式会社」が業務を執り行うというスキームこそが、今回のビジネスモデルの最大のキモなのです。
独立した株式会社……。これがどれだけしがらみという鎖を断ち切り、自由という翼を授けられた存在であるか見てみましょう。
永久機関NHKエデュケーショナル。マーケット戦略の概要
法律が生んだジレンマ?放送法第十五条による縛りプレイ
そもそもNHKとは何なのか?
法律上の分類は「特殊法人」で、税制上の分類は「公共法人」。社会的な定義は「公共放送」として、国が運営する国営放送でも民間が運営する民間放送でもない、まさに『特殊な存在』です。
予算案は国会の承認が必要で、基本的に非課税のNHKを守る根拠が「放送法第十五条」。
【放送法 第十五条(目的)】
NHK(日本放送協会)は、「公共の福祉のために」、日本全国のすみずみまで豊かで良い放送番組を届けることを目的とする。
これを根拠としていますが、物事には裏表があるもの。守られているがゆえに「攻められない」というジレンマを抱えていました。
そこで1989年に誕生したのが、「NHKが100%出資する制作中核企業」と事業概要にも明記された、NHKエデュケーショナル(以下、NE)なのです。



NHKエデュケーショナルの存在意義を大阪冬の陣に例えるなら、「真田丸」みたいなもの。本丸(大坂城=NHK本体)を守りながら、外に飛び出して稼ぎまくる優秀な出城です。かの家康さえも苦しめた、アレです。
NHKエデュケーショナルが担う「3つの核心的役割」
腰の重いNHK本体とは異なり、「株式会社」だからこそ動かせる3つの機能が、おかいつビジネスを支えています。
① 実態は名プロデューサー?「Eテレ」主要番組の実際の制作部隊
実は、Eテレが誇るビッグコンテンツをNHK本体の職員がすべて作っているわけではありません。
『おかあさんといっしょ』はもとより、『いないいないばあっ!』『みいつけた!』『天才てれびくん』など、Eテレの幼児・子ども向け番組の企画・制作の実務をほぼ丸ごと受託しています。つまり、名プロデューサーとしての実態はここです。



親子ともに楽しませてもらってるEテレコンテンツ。NHK職員には足を向けて寝られないって思ってましたが、実際足を向けちゃいけない相手を間違っていましたね!
② ムテ吉より強気な営業スタイル!キャラクターの「著作権(ライセンス)管理」
各番組で生み出される楽曲やキャラクター(『にこにこ、ぷん』から『ガラピコぷ〜』『ファンターネ!』まで)その他もろもろの知的財産権(ライセンス)を管理・運用しています。
外部の玩具メーカー、出版社、アパレルブランドなどが「おかいつグッズ」を作りたい場合、窓口となってライセンス料(ロイヤリティ)を徴収し、管理するのも重要な仕事の一部です。



(けだま。調べ)で、ロイヤリティは5〜10%。これを安いと思わないで頂きたい!何とこれ、粗利(利益)じゃなく「売れた金額そのもの(上代)」からの10%!!ムテ吉よりも強気な営業スタイルですねっ!
③ 注目裁判の傍聴倍率かよ!「ファミリーコンサート」の主催・運営
日本全国を回る『おかあさんといっしょ ファミリーコンサート』や、さいたまスーパーアリーナ等で行われる大規模な『スペシャルステージ』。これらのイベントの企画、チケット販売、会場でのグッズ物販の運営を統括する業務も、収益の重要な柱です。



カミングアウトすると、くじ運が悪いせいなのかファミリーコンサートのチケットは当たった事がありません(涙)。今回調べてみてビックリ!何と倍率は軽く20〜30倍!!注目裁判の傍聴倍率かよっ!!
最大の種明かし:広告費ゼロの真実
ところで、激動の時代を駆け抜けている氷河期世代の同志は理解してくれると思いますが、売上を上げるために一番の課題は、つまるところ以下の3点に尽きると思います。
- 安定的・継続的な顧客の確保
- 徹底的な支出の削減
- 効果的かつ最大限の広告(認知拡大)
以上を踏まえた上で、NHKエデュケーショナルが展開するビジネスモデルを見てみましょう。
【顧客の確保】卒業しても終わらない?番組名に隠された「無限ループの罠」
『おかあさんといっしょ』の主な視聴者層は3〜5歳。仮に5歳の子が小学校に上がって観なくなったとしても、次の3歳の子どもたちがやって来るという「無限ループ」です。
ここで注目したいのが、『おかあさんといっしょ』が積み上げてきた「歴史」というフィルターを一枚重ねてみたとき、その顧客の確保はますます万全になります。
それは……「20年前に6歳を迎えて卒業したかつての子どもたちが、今度は、お母さん、お父さんになって番組に帰ってくる」という周到さ。
顧客が向こうから勝手にやって来る……。顧客の確保に悩んでいるビジネスパーソンにとって、まさに夢のような展開です。



お母さんになって番組に帰ってくる……。以上を踏まえた上で番組名をもう一度見てみると……。深い、深すぎるネーミングですね💦
【おかあさんといっしょ】!!
【支出の削減】氷河期世代には身につまされる、名曲たちの「買い取り契約」
民間企業のCMやJ-POPの世界では、曲がヒットして流れるたびに、作詞・作曲の先生方へ多額の著作権使用料(印税)がチャリンチャリンと流れ続けます。これが番組運営における大きな「固定費(支出)」になるわけです。
しかし、NHKの番組で使われる楽曲のほとんどはJASRAC等に登録されますが、音楽出版者(サブパブリッシャー)としてNHKの関連会社がガッチリと版権に食い込んできます。
つまり、テレビで曲が流れて著作権料が発生しても、そのかなりの割合が「NHKグループの身内」に還流する仕組みになっています。外部への支出を最小限に抑える完璧な防衛システムです。



その他にも「買い取り(著作権譲渡契約)」という契約もあります。これは作詞・作曲・編曲のすべての権利をNHKグループ(NEなど)に譲渡する(買い切る)という契約で、これは仮にその曲がどれだけ売れても、先生方には一切リピート印税が入らず、作った曲が永遠に流れ続けても、もう一円も入らない。氷河期世代には身につまされる話ですね……。
【最大限の広告】他社CMは一切排除!広告費ゼロで届ける「純度100%の宣伝映像」
一般に商品を売るには、莫大な広告費をかけて消費者にいかに認知してもらうかが一番肝要。
その点、NHKには「一切の広告費をかけずに、子どもたちのゴールデンタイムに、最大効率で確実にそのキャラクターを認知させる広告システム」があります。
もちろん、それはいつも通りの本放送を放送するということ。しかも、余計な他者のCMなど一切排除した、純度100%のやつを……。
あげくに「①(実際の制作部隊)」で述べたように、子どもたちの財布――すなわち親をも巻き込む周到ぶり。
こうした、十重二十重(とえはたえ)の防御システムを兼ね備えた老獪なNHKエデュケーショナルが、たくみおねえさん、だいすけおにいさんの「2年連続の卒業特需」を見逃すはずがありません。
編集後記・大人の深謀遠慮と、それでも私たちがよろこんで財布を開く理由
私たちが支払う「受信料」とは別に、親たちの「愛とロス(感動の対価)」から直接集金する、完璧に洗練されたEテレ経済圏のビジネスモデルの構造――。
これまで見てきたさまざまなビジネスの手法は、私たちも学ぶべき点が多いのではないでしょうか?
たくみおねえさんの想定外の卒業……。この大ピンチをも収益最大化のチャンスに変えてしまうNHKエデュケーショナルの真の凄味は、『子どもたちの笑顔』と『親たちの財布のひも』をがっちり掴んで離さないというところにあるのかもしれませんね。
受信料でブランドを守り、広告費ゼロで宣伝し、3年ごとに顧客が自動更新される永久機関。卒業のピンチすら収益に変える老獪な深謀遠慮――。



分かってる。全部分かっています。
それでも来年のファミリーコンサートのチケット、申し込みます。
完敗です、NHKエデュケーショナル。







